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ライフスタイル

連載 独立開業までの道のり(第7回)

~担当先は突然に~

「この連載は新卒で就職に失敗し20年以上に及ぶ試験勉強生活の末、
税理士・社労士資格を取得し苦節46歳にしてようやく悲願の個人事務所開業を
果たした男の資格取得を決意してから独立開業までの壮絶な過程を
複数回にわたって投稿していくものである」

Back in 2007

入所して1年が経過し経験が1巡したところで
最初の決算が終了した担当顧客は通常訪問については
ひとりで任されるようになりました。

これまで知らなかったこと・あやふやだったことが実務を通じて次々解消して
ようやく会計・税務の仕事を理解しはじめたのもこの頃でした。

繁忙期を除き残業・休日出勤は無く毎日17時に定時退社。
まっ直ぐ家に帰れば「5時に夢中」を視聴することが出来、
午後6時半には家族揃って夕食を囲むという健全そのものの生活スタイルに
なりました。

祖母は相変わらず寝たきり生活で母親による介護は続いていましたが
犬を飼い始めたことにより家庭に明るさと癒しが加わることとなりました。

仕事と試験勉強を両立するうえでは願ってもない環境となりましたが
平日の夕食後は家族と団らんしてそのまま睡眠してしまうケースが多く
専門学校の講義を除いた実質の勉強時間はさほど多くとれていなかったように
思います。

今となってはなんとももったいない話で後悔もありますが、
苦手だという理由だけで簿記と真剣に向き合わなかったことと
劣悪な労働環境から一転してゆとりある環境に変わったことにより
精神的な甘さが出てしまったように思います。

再び2科目受験で臨んだ本試験でしたがそんな状況もあって
簿財ともにあえなく不合格…
所長からは

「働きながらの受験は合格科目が無い年の方が普通」

と労わっていただけましたが不合格結果を報告するのは心苦しい思いでした。

そしてこの年の秋に先輩社員の一人が突然退職してしまう事件が起こりました。
残されたメンバーのうち顧客担当が出来る人間が所長、もうひとりの先輩社員、
そして自分の3人だけという緊急事態に陥ることに。
急遽引継ぎが行われましたが当然自分にも新たな担当先が割り振られることに
なりました。

早速、新たなお客様へ担当者交替のご挨拶へ出向く日々となりましたが、
あるお客様は大変活気ある会社で社長もフレンドリーだったものの、
挨拶もそこそこに

「毎年自社株の贈与をやってるので今回も株価の算定をお願いしたい」

とのリクエストが。

経験のない業務だったためその時は先輩社員の方に算定をお願いしましたが、
当然のことながらお客様にとっては経験の有無などまったく関係ないことを
痛感しました。

また、別のお客様は先輩社員の方との二人担当となりましたが
質問へのわかりやすい返答と雑学にあふれ豊富な話題を提供する
先輩のキャラクターに先方の女性社長様はすっかり魅了されたようで

「今後とも是非ご指導よろしくお願いいたします!」

と目を輝かせながら仰っていた光景は今でも鮮明に覚えています。

小規模な会計事務所のお客様は中小企業・個人事業主がほとんどで
一番身近な外部の専門家が税理士でありその職員も同様となります。

頼られる専門家となるには本業の知識や経験を身に着けるのは当然のこと、
その周辺に及ぶ事項にも精通することが必要ですし雑談やユーモアも交えながら
相手を惹きつけファンになっていただける様、自身を高めることが必要と
思い知らされた入所2年目となりました。

つづく