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ライフスタイル

連載 独立開業までの道のり(第9回)

~混乱の果ての希望~

「この連載は新卒で就職に失敗し20年以上に及ぶ試験勉強生活の末、
税理士・社労士資格を取得し苦節46歳にしてようやく悲願の個人事務所開業を
果たした男の資格取得を決意してから独立開業までの壮絶な過程を
複数回にわたって投稿していくものである」

Back in 2011

「悔しいです!」「勝ちたいです!」

とは思うも今のままでは来年も同じ結果になることは明らかで生活スタイルを
根本から見直す必要がありました。

特に自分の場合、平日の過ごし方に問題があり十分な勉強時間が確保出来て
いなかったため朝4時半に起床しての早朝学習を実践することにしました。

これは所長も受験時代を通して実践していたもので最初のうちは外がまだ真っ暗な
まま起きるのが辛く、特に冬場は布団の温もりの誘惑からなかなか抜け出せません
でしたが

「合格したい!」「人生を変えたい!」

と自分自身を奮い立たせ毎朝同じ時間に机に向かうことを日課としました。
同時に睡眠時間はこれまでどおりを確保するため前日夜10時には床に就くように
しました。
それ以降、平日の朝4時半~6時半までの2時間を苦手の簿記の計算問題を中心に
取り組むことにしました。

特に計算問題は毎日少しづつでも継続することが大切で感覚が開けば開くほど
それを取り戻すのに時間を要します。
その意味では頭が鮮明な状態の朝に計算問題に取り組むのは効果的だったように
思います。
習慣にすることでいつしか早朝起床が苦ではなくなり1か月を過ぎたころには完全に
生活スタイルとして定着してきました。

確定申告期は変わらず事務所全体で200人近くを手掛けていましたが
自身の経験の蓄積に加え前年に待望の後輩社員が入所したこともあって
事務所全体での業務がスムーズに流れるようになりこの頃には繁忙期でも
午後7時には揃って退勤、休日出勤も土曜日のみで日曜日は完全休養出来るほどに
までになりました。

そんな状況もあって期限まで5日を残した3月10日にほぼ全員分の申告書を完成、
提出することが出来ました。
そして翌日、事務所の全員で書類の整理等をしていたところであの東日本大震災が
襲来しました。

さすがに直後は混乱し早朝学習も1か月近く中断してしまいましたが、
再度学習を開始したタイミングで8年前に患った坐骨神経痛が再発してしまいました。

前回と比べても明らかに症状が悪く日中は常にコルセットを着用、
睡眠も痛みと痺れで仰向けになることが出来なかったため、抱き枕を使って
横向きの状態で寝ざるを得なくなりました。

こうして世の中も自分自身も非常事態に見舞われたまま時は過ぎ、
とうとう税理士試験本番の日を迎えてしまいました。

当初、計画停電の影響で10月に開催延期などという話も出ていましたが結局、
例年通りの8月初旬開催に。
実際、午後の財表の試験時間中にも地震が発生しましたが問題なく続行。
これまでの年と感触的な違いはそれほどありませんでしたがとにかくがむしゃらに
目の前の問題に向き合い、必死に解答を書いた記憶があります。

確たる手ごたえ無いまま試験を終え業務に勤しんでいたところ、
今度は原因不明の腹痛と胃炎に襲われるようになりました。
1か月2か月たっても症状は改善せず、胃潰瘍を疑い胃カメラ検査をしましたが
結果はまったく異常なし。

結局、これまでのストレスとプレッシャーが一気に噴き出た精神的な影響も
あるだろうということで安定剤を処方されました。

そんな心身ともにスッタモンダした中、合格発表日となり通知を見たところ
簿記論・財務諸表論2科目ともに見事合格しておりました。

税理士試験勉強を開始して8年、簿記論は7回目、財表は6回目の受験の末、
苦しめられた会計科目をついに撃破、ゼロから一気に2科目保有となりました。

税理士試験は科目合格制のため働きながらでも受験できる資格と言われていますが
それがかえって1科目ごとの難易度が上がる結果となり、気づくと何年も受からない
ままダラダラと続けてしまうという罠があります。

最初の段階でつまづいてしまいもはや税理士を目指す資質さえないと思っていたとこ
ろでの吉報に母と手をとりあって喜び、父は泣いておりました。

所長にも結果をメールしたところ

「おめでとう!本当におめでとう!まずはご家族に感謝して、

月曜日は盛大にお祝いしよう!」

と即、返信が。

所長としても開業以来、初めての社員の科目合格でよほど嬉しかったのでしょう。
この年は後輩社員も相続税法に一発合格したため快挙の度合いは薄れてしまいました
が長かったトンネルを抜け出しようやく安堵した気持ちで年越しを迎えることができ
ました。

そしてこの合格の日からまた新たなる戦いが始まり、同時に予期せぬ波乱もまた
起こるのでした。

つづく