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連載 独立開業までの道のり(第12回)

~そうだ大学院、行こう~

「この連載は新卒で就職に失敗し20年以上に及ぶ試験勉強生活の末、
税理士・社労士資格を取得し苦節46歳にしてようやく悲願の個人事務所開業を
果たした男の資格取得を決意してから独立開業までの壮絶な過程を
複数回にわたって投稿していくものである」

Back in 2014

退職が了承されて間もなくして在職最後の確定申告期を迎えました。
その期間、お客様の先に伺ってもどこか心に身が入らず
退職の件を口に出せないもどかしさを感じていました。

それでも一部の特に気にかけていただいているお客様に対しては
どうしても隠すことが出来ず正式な挨拶に出向く日まで他言しないことを
約束していただいたうえでお話しました。

なかでも一番気にかけていただいた地主のお客様。
自分の両親よりも年上でおおらかさと品がありお邪魔する度に
含蓄のあるお言葉をいただき人という点でも大いに尊敬できる方でした。

退職とその決断に至るまでの過程をすべてお話したところ

開口一番、

「なっさけないなあ~」

と呆れたような反応。

「従業員ひとりも守れないで何が経営者だ」

と酷く憤慨されていました。

別の年配の女性のお客様からは

「笑っちゃいけないけど、笑うしかないわ」

という独特の反応も。

また、一番の理解者である友人からは

「個人事務所は所長とウマが合わなくなったら終わり」

「宇田川君にとってそういうタイミングだったのでしょう。

 逆らえない運命ってあると思うよ」

と決断を尊重してくれる言葉をかけてくれました。

そして繁忙期後、最初のミーティングで予定通り
所長から全員に向けて退職が発表され引継ぎ業務が開始されました。
ただし、引継ぎといってもほとんどが所長や先輩から降りてきた担当先が
再び戻るだけとあって、技術的な引継ぎ業務はほとんどなく
所長とともに退職と担当者交代のご挨拶に出向くことが中心となりました。

引継ぎ開始から1ヶ月ほど経過して迎えた最終出勤日。
この日ばかりはわだかまりは抜きにして所長と握手をしてお別れ。
心の底から納得し清々しい思いで事務所を後にしました。

結果的に8年間お世話になり職業会計人としての基礎が出来たのは
間違いなくこの事務所での経験があってのことでした。
採用していただきここまで育てていただいたことは今でも感謝しておりますし
自分としても至らぬ点は多々ありましたがお世話になった最低限の義理は
果たせたのではと思っております。

退職後の生活はこの時点で税理士試験まで約3ヶ月ほどになっていたため
試験日までは勉強専念の生活を送ることは決めていたものの
再就職を含めた具体的な身の振り方は決めていませんでした。

先輩に退職の相談をした際、

「辞めるのは仕方ないとして、その後はどうするんだ?」

と問われた時も

「先のことは全然決めてません」

と答えるしかなく…

そんな折、前年に税理士登録した大学時代の同級生のことが頭に浮かびました。
大学在学中から税理士を志してダブルスクールしていたことは知っていましたが
在学中も卒業してからも特に連絡を取り合う関係ではありませんでした。

ところが共通の友人を通じてふとしたきっかけで連絡をとり二人で会食することに。
話の中で大学卒業〜資格取得までの経緯を聞いたところ
卒業後はそのまま大学院に進学し税法3科目の試験免除を受けた後、
会計2科目に合格したとのことでした。

同級生と会食したひもの屋新小岩店

前から大学院通学での科目免除制度が存在することは知っていましたが
当時の自分は話を聞いたところで特段関心をもつことはありませんでした。

理由のひとつに所長が16年かけて5科目合格を果たした経験とプライドから
5科目合格に強いこだわりがあり、大学院免除を目の敵にしていたことがありました。

少しでも話題にしようものなら烈火の如く怒りだし

「逃げだ」

「抜け道だ」

「ヤツらは勉強しない」

「そんな方法、俺は認めない」

等、それはそれはケチョンケチョンに批判していました。

その影響もあって自分自身も5科目合格のみがまっとうな資格取得への
道であると信じ、大学院免除に対してもやはり否定的な考えでした。

しかし、簿財合格以降は結局、合格科目を重ねることが出来ず
年齢も37歳になりこの時点で税法3科目を残した状況では合格するまで
あとどれだけの年数を要するか見通しがたちませんでした。

独立開業という目標を早期に実現させるためには年1回きりで受かる保証も無い
試験にいつまでも時間を捧げるよりも大学院を卒業して確実に免除を受けた方が
近道ではないか?と心が動きはじめていました。

障害になる要素が取り払われた今、大学院の道を決断しない理由は
もうありませんでした。

「そうだ、大学院に行けばいいんだ…」

混乱と苦悩の末、ようやく辿り着いた人生の方向転換でした。

つづく