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連載 独立開業までの道のり(第19回)

~おれがやめたら だれがやるのか~

「この連載は新卒で就職に失敗し20年以上に及ぶ試験勉強生活の末、
税理士・社労士資格を取得し苦節46歳にしてようやく悲願の個人事務所開業を
果たした男の資格取得を決意してから独立開業までの壮絶な過程を
複数回にわたって投稿していくものである」

Back in 2020

年末に不合格報告をした際に友人から受けた

「覚悟が足りないんじゃないの?」

という言葉が頭を離れずいつもにも増して重苦しい年越しを過ごしました。

年初業務は例年どおりの慌ただしさでしたが前年秋に採用した最年少社員が
意外なところでガッツを見せ助けになってくれたことだけが唯一の光明でした。

2月に入るとその最年少社員と新卒社員が揃いも揃って結婚入籍を発表。

24歳と23歳の若手二人の相次ぐゴールインに事務所全体が祝福ムードのなか、
先を越された43歳の非モテオジサンとしては独り身の寂しさがより身に染みて
おめでたいと思う一方、複雑な思いもありました。

若手社員二人の結婚お祝い会の様子。この後予想だにしない悲劇が起こるとは…

ともあれ身を固めたことで一層仕事に精を出してもらおうじゃないのと
お手並み拝見気分でいたところ最年少社員が突如、無断欠勤する事態が発生。

1週間以上音信不通となった挙げ句、やっと本人から上席に連絡が入るもまさかの
鬱病診断を受けたとの報告が。

新卒社員と協力して前年退職した有資格社員の穴をカバーしてほしいと期待をかけて
いた矢先での悲劇。その後再び音沙汰が無くなり一度も姿を見せることなくそのまま
退職となりました。

欠勤直前まで元気そのもので言動も特に変わった様子も見られなかったことを思うと
到底、信じ難い退職理由。

在職わずか5か月での不可解な退職劇に上席は

「ウチの何が不満なの?」と

お手上げともとれる発言。

採用初日から気にかけ手塩にかけ育ててきた自分としても無念でやるせない
思いでした。

これで160人もの申告件数を実質3人でこなさなくてはならなくなり絶望的とも思え
たところで新型コロナウイルスまん延による確定申告期限1か月延長の発表が。

窮地に陥っていたところでの無条件の延長発表は不謹慎ながら朗報以外の何物でもな
く、世の中の混乱とは裏腹に事務所一同ホッと胸を撫でおろしていました。

申告延長発表直後に行われた飲み会の様子
申告延長発表直後に行われた飲み会の様子2

確定申告期間中にも飲み会が開かれるというクラスターお構いナシなノリでしたが
結局、申告はこれまで以上に既存メンバーを総動員した結果、提出延長となったのは
限られた先にとどまりほとんどが当初の期限の3月15日までに申告が終了。

その一方で自分自身は21日連続出勤とまたしても過去最高記録を更新してしまい
ました。

仕事帰りが遅くなった日によく買っていたほんのり屋のおにぎり。閉店間際セールで1個100円!(当時)

一息ついたのもつかの間、またしてもドン底に突き落とされる事態が発生。

3年前に確定申告の臨時助っ人として復帰し、その後も在宅勤務という形で会計入力
業務を引き受けていただいてた元社員の方が3月限りで退職することが判明。

ボリュームある案件を中心に会計入力のほとんどを依頼していた自分にとっては
悪夢のような知らせで目の前が真っ暗に。

記帳代行がメインの会計事務所であるにも関わらず会計入力専門の内勤社員を
採用してこなかったツケがここにきて一気に出た形に。

慌てて新規社員の募集を開始するも直後にコロナによる混乱が加速度的に進んでいっ
た間の悪さもあって応募自体ほぼ無く早くも行き詰まり。

結局、当面の間自分で会計を消化せざるを得なくなり平日は朝から夕方まで事務所
で業務後、夜はテレワークと称して自宅で会計入力をこなし土日も終日在宅で会計入
力を進めるという仕事一色の生活となってしまいました。

この方の言葉で言えば「藪からスティック」「根耳にウォーター」な事態でした。

少人数の中で立て続けに人員が消え事務所内までもが緊急事態に陥る笑えない状況と
なりましたが取り急ぎ派遣社員として独立開業準備中という状況の方が夏までの期間
限定という契約で加わることとなり溜まっていた会計入力をひたすら消化してもらい
ました。

そして、渋い状況だった新規採用の方にもようやく動きがあり1名が面接に来社。
30歳過ぎた転職希望の男性で業界未経験ではありましたが真面目な人柄と前職が経
理職とあって会計入力要員として即戦力になるとの判断で採用が決まりました。

やがて緊急事態宣言が出され世の中でステイホームの流れが進んだこともあって転職
社員については入社後数日余りで早くも自宅でのリモート業務に従事してもらうこと
となりました。

満足な初期教育も出来ないままのスタートでしたが、基礎的な会計入力については
ほぼ問題なくこなしてくれたお陰もあって自身のサービス残業もひとまず解消の
方向に向かいました。

通常業務についてはようやく正常に戻りつつありましたが、この頃から各顧問先から
のコロナ緊急融資の相談と必要書類の手配業務が増え、顧客によっては申込書の書
き方から手取り足取り指導することに。

さらにコロナを機に申請が爆発的に増加した雇用調整助成金の書類の書き方を教えて
ほしいという問い合わせもあり、事務所で提携している社労士事務所に聞いてもらう
よう案内するも、すでに問い合わせ済みで多忙を理由に断られたそうで役所の電話も
繋がらずどうしたら…という悲痛な訴えも。

5月に入り今度は新たに開始された持続化給付金の問い合わせとそれに伴う必要書類
の提供依頼の雨嵐。

持続化給付金の案内リーフレット
外出自粛を呼びかけるリーフレット

5月だけで自分の担当の決算申告が12件あってただでさえ多忙な中、
緊急融資、休業協力金、持続化給付金とコロナ対応に奔走した影響で
外出自粛も連休もまったく関係ナシ。

テレワークと称した持ち帰り残業もいつの間にか復活し確定申告時期に匹敵する
疲労度合でしたが危機的な状況のなかでなんとか顧問先の助けになりたい一心で
疲れを溜めないよう、コロナに感染しないようにと気力と使命感だけでなんとか
持ち堪えていました。

緊急事態宣言下の池袋駅前
ブルーインパルスによる医療従事者への感謝飛行

緊急事態宣言が明けた6月にはもう一人新たに社員が入社。

22歳の女性で若いながらも会計事務所での経験が1年ほどあり採用を巡っては当初、
上席と意見が相違しましたが、経験はもちろん真面目で素直な人柄を高く評価し自分
の強い希望もあって採用が決まりました。

上席以下バックオフィス部門の管理部長やそのメンバーはじめ女性が多い事務所では
ありましたが税務会計部門での女性社員採用は自分が入社してから初めてのことでし
た。

新卒社員、転職社員に加えて後輩社員が一気に3人となりサポート人員がようやく固
まりつつある状況に。

初期教育は転職社員と女性社員との2人同時進行となりましたが特に女性社員は業務
面以外でも率先して電話に出たりお茶出しをしてくれたりと地味ながらも職場の雰囲
気に彩を添える存在となりました。

7月は例年であれば閑散期で目前に迫った税理士試験に向け追い込みをかけている
時期ですがコロナ対応に加えて本社事務所の改装工事も重なりバタバタが続き一向
に学習が捗らず。

そしてある日、上席からものづくり補助金の申請対応をするようにとの指示が。

突如として降ってきた業務指示でしたが誰一人手掛けたこともない初めての試みな
うえ、話があったのが締切1か月を切ってからでは対応ははなから無理な話というも
の、思い付きのような業務指示に疑問と憤りの念を抱かざるを得ませんでした。

慌てて書籍を購入するも結局、申請は延期に。瞬転寸前のドタバタ劇でした。

そしてあっという間に8月になり税理士試験本番に。

感染拡大の影響であらゆる資格検定試験が中止、延期になっており
さらにオリンピックまでもが開催延期が決定したのを見て
4年に一度の世界的なビッグイベントですらそのような状況なのだから、
年1回、それも一国内だけの税理士試験も当然延長、あわよくば中止になることを
信じて疑いませんでしたが、あろうことか予定どおりの日程で1ミリの変更もなく
実施されることに。

国税庁ホームページより

会場入口での検温はあったものの机や椅子の間隔を空ける等の目立った感染対策も
されておらずほぼ例年と変わらぬ試験光景でした。

感触も今ひとつで苦虫を噛み潰しながら試験場を後に。

悶々とした思いのまま帰宅後、昨年までやっていた「アレ」を再開すべく
行動を起こしたのでした。

つづく