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連載 独立開業までの道のり(第21回)

~怒り 涙 ほほえみ~

「この連載は新卒で就職に失敗し20年以上に及ぶ試験勉強生活の末、
税理士・社労士資格を取得し苦節46歳にしてようやく悲願の個人事務所開業を
果たした男の資格取得を決意してから独立開業までの壮絶な過程を
複数回にわたって投稿していくものである」

Back in 2021

前年末に試験不合格を報告した際、上席から

「結婚して1年でも早く次のステップに行けなければならない時に
それがずっと先延ばしになっているのは心苦しいし来年は勉強時間を
確保してなんとしても合格してほしい」

と前置きしたうえで

来年の1月から税理士試験日までの期間限定で残業ナシの定時あがり、
かつ週4日の短時間勤務に変更しないか?

との打診を受けました。

仕事に追われ十分な勉強時間が確保出来なかったことが結果が出ない最大の原因
であることは間違いなく、自分としても願ったり叶ったりの打診でしたが
新生活を控え出費も今より確実に多くなるであろう身として期間限定とはいえ
収入が減少することは痛手でした。

それでも上席から

「数か月の収入の目減りを惜しむばかりにまた来年も同じことの繰り返しでは
元も子もないのでは?」

とも付け加えられ

時間はお金に代えられないとの思いから来年が正念場と覚悟を決め、
ありがたく提案を受けることにしました。

勤務形態変更に伴ってこれまでの税務部長の役職から降りる形となり後任として
前年4月から加わった元派遣社員が新部長として就任すること。
当初は故郷に帰り独立開業の準備をするとの予定が一転、派遣期間終了と同時に
そのまま正社員として入社していました。

2年前に自分から管理職降格を申し出た際には他になり手がいないという理由で断ら
れていましたが事務所内の人員構成の変化もあって逆に上席からの打診によりそれが
実現する形に。

そこまでしたからには何としても今年は合格しなければならないと今までにないほど
の危機感が芽生え平日は朝5時前に起床し7時から職場近くのベローチェで始業前ま
で勉強、終業後は新たに自宅近くの有料自習室に通い再び勉強という生活となりまし
た。

朝活スポットだったベローチェ田町店
池袋の有料自習室メダリストクラブ(写真のお姉さんはモデル)

婚約中の彼女とは土曜日に会って一日過ごすスタイルは変わりませんでしたが
自室で新居の物件検索や二人で料理をする等のおうちデートが中心となりました。

夕食後には理論暗唱タイムとして理論集を見ながら正確に暗記が出来ているかどうか
チェックしてくれる等、積極的に勉強にも協力してくれるようになりました。

しかしこの勤務体系の変更は若手メンバー3人にとっては負荷を増大させる結果とな
りました。

直接の上司が自分から新部長に代わり指導内容が一変したことにより代わる代わる
体調不良を理由とする欠勤を繰り返し、ついには全員が欠勤するまでに事態が悪化。

確定申告も想定していた割り振りが出来なくなったことで自分の担当件数もこれまで
とさほど変化が無く前年と同様に申告期限が1か月延長したことで集中的な負担は避
けられたものの短時間勤務に早くも暗雲がたちこめました。

そして3月に入り恐れていたことが現実に。
欠勤続きだった若手メンバーのうちまず最年少の女性社員が退職することになり
さらに月末には新卒社員が退職するという悪夢のような退職ドミノに。

女性社員は自分のたっての希望で採用し、新卒社員にいたっては入社以来着実に実力
をつけ柱になりつつあったのに加え、社交的で顧客からの受けも抜群でこれからとい
う時の退職は事務所にとっても自分にとっても大きな痛手となりました。

新卒社員からは退職前に個別にランチに誘った際、会話の中で当初上席から聞いてい
た退職理由とは異なる退職理由を打ち明けられました。

それまでの本人の様子からある程度予想がついていたとはいえ、助けになれなかった
自分の無力さを痛感しました。

終わり際に思わずかけた言葉が

「力になれなくてごめんな」

7年前、前事務所の先輩に退職を報告した際に言われた言葉を時が経って今度は自分
が後輩メンバーに言わなければならない場面が訪れてしまいました。

自分が管理職のままだったらそのまま居続けただろうと思うと心苦しく2人には
ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

新卒社員と最後のランチをしたスペイン料理屋

悲しみに暮れる中で4月に入り新居への引っ越しと入籍を済ませ新生活がスタートし
ましたがトドメとばかりに今度は前年秋に入社したばかりの経験者社員も体調不良を
理由に退職することになり何かに取り憑かれたかの如く人が去ってゆく異常事態に。

そもそも事務所側から短時間勤務をもちかけられたのも人員が着実に増え自分の担当
業務を他のメンバーに振り分けられる算段があってこその提案だったと思いますが相
次ぐメンバーの退職により業務量が減るどころか逆に担当が次々とリターンされ、
むしろこれまでより増えるという本末転倒な状況に。

月終わりになって昨年官報合格したばかりの人材を採用しましたがいかんせん実務未
経験。顧客対応までまるっと引き受けられる即戦力の人材を採用する以外、自分の
業務負担を減らす方法は無く5月の決算申告は結局、前年までと同じ12件の申告を
手がけることに。

申告件数の多さとこれまでの短時間勤務によってあらゆる作業が滞っていたツケがこ
こに来て一気に回る形となり連日連夜の残業に加えて土日も普通に出社が続き短時間
勤務が一転して長時間労働となりました。

これには新婚の妻も到底理解を示すはずもなく、ただでさえ同居以来まともに一日一
緒にいた日がほとんどなく無理がかかっていたところに精神的なストレスも重なり体
調を崩す日が続きました。

仕事で心身ともに疲れ果て妻とも蟠りが生まれ、もはや心の安息の場は無く
一番の理解者である友人からはSNSの投稿からただならぬ事態に陥っているのを見て
すぐさま状況を案ずるLINEが入りました。

一日一善ならぬ一日一件申告でも間に合わず

約1か月もの間、怒りと苦しみと悲しみで紋々とする中、なんとか首の皮一枚で
すべての申告を期限内に終えることができました。

申告作業を全て終え真っ先に妻と今後についての話し合いをしました。
そして6月からは当初の取り決め通り週4日、定時上がりを維持したうえで
試験1か月前からは積極的に有給をとらせてもらえることを上席と確認しました。

事務所から横流しでもらったメロン。逆に「請求書です」と言いたいほどの激務でした

結婚以来、妻には迷惑をかけっぱなしになってしまいましたが実家の母親から

「夫婦なんだからこれから先も色々なことがあるわけだし迷惑をかけるというのは
どうなのかな?今後は二人でいる時間を作ってあげてください」

と意見をされつつ温かいメッセージが。

妻の体調も回復し蟠りも解けたところで引き続き試験勉強のサポートをしてもらうこ
とになりあとは試験本番に向け一心不乱に走るのみとなりました。

つづく